講義要項

講義予定と資料

• 第１回の資料について、当初掲載版に字句を一部追加・修正しました。
  　　ｍ（＿ ＿）ｍ　（これはお詫びマークです。へ、へ〜と這い蹲っているように見えるでしょう） 。初回講義予定だった10月3日は、風邪の悪化により休講にしました。申し訳ありませんが、上記の予定表は1回ずらして実施し、適当な頃合いの週に補講を行ないますが、これも17日の顔合わせ後に相談させていただきます。そこで、表はそれまで修正せずにしておきます。
  
  
• １０月１７日　最初に講義の進行についてや希望する受講態度、教科書説明などに２０分も使ってしまいましたが、ここは声を大にして申し上げておきたいところなのです。実験的にやってみましたが、良いお答え（誤った答えは、教育的には良い答えでみんなのためになります）や鋭いご質問があり、受講生の皆さんの熱気と元気が感じられました。今後が楽しみです。『５限目はやる気の民法』で行きましょう。ただ、質疑応答ではどうしても進行が遅いので、次々回以降は設問を絞ってみます。今回は、添付についてのQ1-09は省略しますので、お約束通り、簡単な答えをここに書いておきます。
  
  　　【添付の基本的性格について】　添付（付合・加工・混和）は、新たな合成物や加工物などを分離・復旧させるのは社会経済上の無駄であり公益に反するから、分離を否定する限りで強行規定性を有するが、合成物・加工物等の所有権の帰属の決定は、当事者が合意で決めうる。242条以下の規定は、その意味で補充規定である。
  　(1)　×　黙示の意思表示により原始的に注文者に所有権が帰属すると考えられている。
  　(2)　○　独立した建物と評価されれば、材料を提供した請負人Ｙに原始的に帰属し、引渡により注文者に移転すると考えられている。もっとも、判例の立場でも、特約による規定とは別の所有権帰属の決め方は可能。また、学説では、請負人に所有権を帰属させても敷地利用権がないためあまり意味はないなどとして、特約がない場合にも、注文者に原始的に帰属するとの説が有力。
  　(3)　○　乙が独立した建物になる前であれば、完成した建物の帰属は動産付合や加工の規定で、より大きな材料や労力を提供した方に決まる。しかし、本問のように、すでに乙が独立した不動産になっていれば、不動産付合のルールによることになり、加工の規定は適用されない（いわば不動産が常に主たる物）。よって、Ｚが乙の所有権を取得できる余地はない。
  　(4)　○　動産・建前には独立性がないため、甲土地の所有権に付合する。動産たる建材の所有権を請負人に留保していたと思われる建築請負契約も、このような場合には、すでに解除されているだろう。
  　(5)　×　動産たる建前への加工により甲とは独立した不動産乙ができあがったので、246条2項によりＺが乙の所有権を取得できる可能性がある。もっとも(2)の説明も参照。以上については、民法判例百選 Ｉ 73事件と民法判例百選 II 66事件を参照。
  
  　次回、Q1-10（物権行為の独自性の有無と所有権移転時期）から続きをやります。ただし、Q1-10は、学説の詳細には立ち入らず、解説をここに書くことにします。
  
  　※(4)については、別解がありうるので、初心者用問題としては不適切でした。講義の際に口頭で説明すると共に、リンクを貼って補足説明を掲載する予定です。
  
  
• 10月24日　まずまずの進行速度でした。
  　お約束通り、２点について補足説明を書いておきます。長いので、ここにリンクした別ページです。続いて、「ロストボールのゆくえ」というコラムも同じ箇所に掲載しました（11月1日）。
  
  
• 10月31日　ついに１回分程度ズレが生じてしまいました。最初の２回分は、手探り状態であったため、配付資料の問題量が多すぎたようです。そこで、第２回配布分の不動産物権変動(1)を終わったものと看做します。
  
  　解除と登記については、判例の見解は、基本的には取消と登記の問題と変わりません。細かい相違は生じますが、基本的な理解という点では、枝葉に近いので、補足説明にとどめ、次回は、取得時効と登記、相続と登記を扱い、もし時間に余裕が生じれば、今回配布した第三者の問題にも少し立ち入ることにします。
  
  　問題文を講義で取り上げる際、時間が惜しいので読み上げを省略していますが、どういう問題を扱っているのかが瞬時には頭に入らず、ついて行けない、との指摘をいただきました。そこで、時間とのかねあいはありますが、ご要望にお応えして、取り上げる問題あるいは紛争事例の概要だけをざっと紹介して、その後、中身に入るようにします。
  
  　講義中で指摘がありましたように、Q2-04の「無権代理」という設定は、追認によりＢに甲の所有権が帰属するのではないかという点と、Ｘへの実質的な所有権帰属を基礎づける点で、問題がありました。お詫びして、「妻Ｂの名前を使って」と変えます。Ｂがいかにも女性の名前であれば、これでも無権代理したと見られるでしょうが、たとえば、「薫」「馨」「珠樹」など、字面からは男女の区別が付きにくい名前であれば、「ＢことＸ」という認定が素直にできるように思います。ＰＤＦファイルにも赤字で修正を入れておきました。
  
  
• 11月7日　前回の終わりに、今回は「第三者」のところに入るつもりでやると申し上げたつもりで、ここにも上のように、そのとおり書いたのですが、冒頭で、そうではないという発言を私がして帰ったという複数の証言があり、いきなり動揺 (^_^;)。そこで１回ずらしとすることを決意しました。
  
  　休講になった初回分の埋め合わせは11月28日の同じ時間帯に、行います。学園祭期間中で、ほんらい講義はお休みのはずですし、すでに予定をいれてしまった方もいるようですが、ほかに時間を取れるところがないので、申し訳ないですが、ご了解下さい。
  　１回ずれた分については、今のところ、共同抵当と根抵当権の回を自習課題に切り替えて対応しようかと考えています。詳しいことは、講義の時やここで発表します。
  
  　　Q3-03の�Bで、時効完成前に買い受け、時効完成後に移転登記を行った事例についての最高裁判決は、最判昭和42年7月21日民集21巻6号1653頁です。時効取得者は無権利者からの取得者（所有権を取得していない隣地部分も買い受けた者）で、時効完成時が、前主の悪意の自主占有と併せて昭和13年3月開始で昭和33年3月、一方、相次相続を経た真の所有者からの買主は、昭和33年2月に売買契約を行い、登記名義がずっと以前の所有者名義になっていたため便法として「時効取得を理由にする欠席判決で！」保存登記をした売主から同年12月に移転登記を受けていました。事実は小説より奇なりを地で行く事件です。事実関係は原審判決を見ないとわかりません。
  
  
  　Q3-07について、平成14年の最高裁判決をうっかり見落としていて、誤った解説をしました。お詫びに、かなり詳しい解説をここに掲載しますので、ご一読下さい。
  
  
  
• 11月14日　まず、Q4-05の設問の冒頭、「Ｘより先に登記を備えて、」は、「Ｙより先に登記を備えて、」の誤記でした。訂正してお詫びします。PDFファイルは赤で修正しておきました。
  
  
  　Q4-05の(5)の補足を２点。いずれも講義後に質問があった事項です。
  
  　1)　Ｙ2の建物保存登記は、Ｙ1の賃借権の対抗要件としては無効であり、Ｙ2には賃借権がないからＹ2の賃借権の対抗要件ともならない、というのが判例です（最大判昭和41年4月27日民集20巻4号870頁）。「他人名義の建物の登記によつては、自己の建物の所有権さえ第三者に対抗できないものであり、自己の建物の所有権を対抗し得る登記あることを前提として、これを以つて賃借権の登記に代えんとする建物保護法一条の法意に照し、かかる場合は、同法の保護を受けるに値しないからである。」というのが理由です。ただし、この判決は、9対6と、反対意見も非常に強く、その中には、同居の家族名義の登記は実態を反映しない部分があるが虚偽の登記ではなく、現地を調査する手がかりとなるので、対抗力を認めても建物保護法1条（現在の借地借家法10条相当）の趣旨に反しないとするものや、賃借権の主体は家族という家団（権利能力のない社団）であり、その代表者として息子の名義で登記をしても実態と齟齬しない有効な登記である、などの考え方が示されています。
  
  　2)　Ｘに登記がない場合、Ｙらに対する請求が認められるかどうかは微妙で、直接の最高裁判例はないと思います。通常は、土地所有権取得者Ｘが登記をしたうえで対抗要件が欠けるＹらに建物収去・土地明渡し等を求める紛争となるからです。この解答は、理論的には二とおり考えられて、不動産賃借権は対抗要件を備えて初めて物権化し、177条の第三者となるとするなら、Ｘは登記がなくてもＹらの所有権の取得を対抗できることになります（物権は債権に優先する。賃借権の物権化はあくまで例外的処理という考え方です）。
  　これに対して、177条の第三者には物権取得者のみならず広く物的支配を確立した者を含む（位置づけに争いがありますが、立木について特定物債権者を第三者とした最判昭和28年9月18日民集7巻9号954頁があります）と考えれば、対抗要件を欠く不動産賃借人も不動産使用価値の排他的な支配を争う第三者ですから、所有権の譲受人は登記がなければ対抗できないことになります。
  
  
  　Q4-07について、時間が押していましたので、お約束通り文章で解答を確認しておきます。
  　判例の「第三者」の定義・基準は広く、賃料請求ケースや、妨害排除の場合の登記名義人の責任ケース（後に取り上げる予定です）まで、幅広く登記を基準とした紛争解決を認める基準となっています。のみならず、主観的態様を理由に背信的悪意者等を第三者から排除する論理としても機能しています。このような基準は、きわめて柔軟である反面、対抗問題（登記の先後によってしか解決できない問題）とそうでないもの（登記の具備が紛争解決の判断要素となりうる程度にすぎない紛争）を論理的に明確に区別できず判断が恣意的・流動的になりかねないとか、第三者の客観的資格の問題と主観的態様の問題が異質な問題であることが理解しにくくなる、などの批判が向けられます。
  　
  　対抗問題（限定）説の第三者の定義・基準は逆に、非常に狭く、何が対抗問題か、つまり、登記具備の先後によってしか解決できない固有の紛争（対抗問題）を明確に示す点で、体系的・理論的に一貫します。しかし、このことは逆に、登記の機能をあまりに狭く理解しすぎていないか、それによって妥当な解決を図りにくい硬直した基準となっていないか、などの問題点が指摘されます。
  　
  　我妻博士の「有効な取引関係」説は、判例の正当の利益論と対抗問題（限定）説の中庸を狙う考え方と評価でき、賃借人に対する賃料請求なども177条の適用範囲だという結論を導くことができるうえ、第三者の主観的態様の問題とは別次元の問題であることも示せます。それゆえ、おそらく、サイレント・マジョリティの地位を占めていると推測されます。ただ、論文等では、論理明快な対抗問題説が好まれており、「有効な取引関係」説は、とりわけ賃借人に対する賃料請求で、利益衡量を踏まえてなお登記不要説を採る見解からは、中途半端だという批判を受けることになるでしょう。
  
  
• 11月21日　まず、Q5-08の問題で、古書甲の代金を最初10万円としていたのに、途中から残代金との関係で5万円になっていて、前後が齟齬していました。5万円と訂正してください。問題のpdf自体もすでに修正しました。 訂正してお詫びします。なお、問題文は(1)でＸＡ間に有効な契約が結ばれたとして問いを立てていますので、上記の誤記は結論には影響しません。ただ、(1)のこの記述を度外視して、誤記通りで問題を考えますと、店の商品の売却について一定の範囲で代理権を与えられているアルバイト店員Ｂが10万円の値札の商品を半額の5万円で売る契約は、無権代理である可能性が高いが、他方で、110条の表見代理として、結局Ａに効果帰属する場合が多いと考えられます。
  
  　Q5-02については、正解の表を配布し、コメントを少々加えました。ここからpdfファイルにリンクを貼っておきます。
  
  　今回の中では、立木の明認方法をめぐるQ5-04の(2)(3)(5)が少々難しい。また、Q5-05〜07は、基礎知識確認なので、これは本をちょっと調べればできる。Q5-08の(1)の論理が理解できることが最も重要です。
  　簡略に書くと、
  
  　所有権が契約締結時に移転していれば、以後のＡの占有は、所有者Ｘのための他主占有であると解されるため、所有権移転時に、Ｘは占有改定により対抗要件を備えたものと認められる可能性が高い。
  　そうすると11月7日の時点でＡは無権利者となっているから、Ｙは178条ではなく192条で保護されるか否かが決まる。
  　ところが判例は、占有改定による即時取得を認めない否定説に立つから、11月13日には、仮にＹが同様に占有改定による甲の引渡しを受けたとしても、Ｙは甲の所有権を取得できない。
  　さらに、11月14日にＹはしぶしぶとはいえＡから甲の現実の引渡しを受けているから、その時点で即時取得が成立するかどうかが問題となるが、直前の店員Ｂとのやりとりから、すでに甲の所有権を取得しているＸが居ることを知ったか、Ｘのような権利者が存在することは知りうる状態になっていたと思われるから、悪意もしくは過失を理由にＹは所有権を取得できない、とされる可能性が高い。
  　判例のように占有改定による即時取得を否定しつつＹを保護しようとするなら、このような状況においてＹには、Ｘの権利取得の有無について、ＢやＡに尋ねる以上の注意を払う義務がなく、善意無過失だ、と主張するしかない。少々難しそうである。
  
  　(2)については、ＢやＡとのやりとり次第では、「具体的に占有改定の合意が認定され引渡しがあるので、代金未払でもＸやＹは所有権を取得している」、とされる可能性がある。そうなると(1)とそれほど結論は異ならない。ただ、判例のように所有権が移転しているからとして比較的緩やかに占有改定を認定する論理は採りにくい。
  　むしろ、占有改定の合意の認定を厳しくすると、ＸもＹも引渡しを受けていないし、代金も完済されていないので、債権契約は結ばれているが、所有権はＸにもＹにも移転していないとされよう。その結果、11月14日にＹが現実の引渡しを受けたときに、178条が適用されて、Ｙが勝つことになりそうである。Ｙは、事情について悪意であっても、債権契約締結の争いとして許された自由競争の範囲内の行為として背信的悪意者ではなく、Ｘに優先するからである。
  
  　第１回10分間ミニテストの問題とその解答・解説・点数分布・講評を別ページに示します。それぞれのリンクをクリックしてください。
  
  
  
• 11月２８日　用益物権は時間足りずになりました。今日は、そもそも休校日で、補講として入れたので、出席できない人もいます。そこで、今回に限り、全部について解答編を掲載します。Q6-02(4)のＤはＥの誤りでした。お詫びして訂正します。pdfも赤で修正しておきました。
  
  先週のミニテストの７点未満の者の追加課題は、全員提出で結構でした。これから内容を読み、解答や注意点をここに書く予定です。
  
  
  
• 1２月５日　風邪で声が聞き取りにくくてすみませんでした。また、こういう講義方式でやっても時間が足りないのは、いたしかたない部分もありますので、ご了解下さい。Q7-08と09については、ここに解答編を掲載します。
  
  
• １２月１２日／１９日　作成した問題数が多すぎたため、かなり時間がずれてしまいました。留置権・先取特権は、その他のところと合体して取り上げることにします。２６日・２７日は、上記の表のように１回ずつずれることになります。
  
  
  
• １２月２６日　滌除／抵当権消滅請求については、紙上解説とします。最終回に講義資料に付けて配布します。このホームページにも掲載します。
  
  
• １２月２７日　２７日に振替講義とは、講義する方も受講する方もご苦労様、と言いたいですね。講義で端折らざるを得なかった抵当権の処分についての解答例は、pdfで提供します。ここにリンクを貼りますので適宜ダウンロードしてください。
  
  
• 　１月１６日　３以外は、とりあえず終わりました。今日は、不動産譲渡担保権のところで、かなり活発な意見や質問が出て良かったです。「３　不動産の留置権と不動産先取特権」は、こちらにpdfでの解説を掲載しましたので、ごらんください。また、提出いただいた自習課題の解答例は、こちらにpdfで提供します。
  　あと１回、頑張りましょう。
  
  
• 　１月２３日　動産売買先取特権以下が時間切れになってしまいました。ある程度は覚悟していたこととはいえ、動産譲渡担保の実行につき即時取得が成立するか否かという、思ってもいなかった難問に当たってしまったのが運の尽き。これについては、きわめて応用的な議論だったので、わからなくてもかまいませんが、何を議論していたかを知りたい人のために、補足説明をします。基本の確認のためにも、ぜひ読んで下さい。ここです。
  　また、動産売買先取特権以下についての解説と、集合（流動）財産譲渡担保及び動産・債権譲渡特例法に関するレジュメに、補足を付けたものを用意しました。これもかなり応用的な問題を含んでいますので、基礎編として身につけなければならない知識とは言えません。試験の対象外にします。しかし、この問題を考えると、一般的な動産・債権譲渡担保についての基礎知識を確認することにもなりますので、余力がある方は、ぜひ教科書等の記述とあわせて読んでみてください。
  　→ここに掲載。上の補足とは別ファイルです。